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お知らせ

産官学のキーパーソンが語る「北の大地に立ち上がる最先端半導体産業」 

北海道大学 半導体フロンティア教育研究機構(IFERS/アイファース)は、2026年9月9日、第87回応用物理学会秋季学術講演会の一般シンポジウム「北の大地に立ち上がる最先端半導体産業」を開催しました。

当日は会場・オンラインを合わせて約430名が参加し、メディアによる取材も行われるなど、北海道における半導体産業の発展や人材育成への高い関心がうかがえる場となりました。本レポートでは、北海道で進む半導体産業集積の現状と展望について、当日の講演内容を中心にご紹介します。 

開会挨拶・趣旨説明

登壇者:IFERS 葛西 誠也 副機構長

座長を務めた葛西副機構長より、本シンポジウムの趣旨が説明されました。現在、北海道では先端半導体製造拠点の整備を契機に、産業集積、人材育成、そして研究開発のエコシステム形成が急速に進んでいます。今回のシンポジウムでは、産・官・学それぞれの最前線で北海道の半導体産業を支えるキーパーソンが集結し、これまでの取り組みや現場の課題、そして未来の展望について考える機会として開催されました。 

北海道における半導体産業集積に向けた取組

登壇者:北海道経済産業局 南 智彦 参事官

南参事官からは、政府の「地域未来戦略」を踏まえて進められている「北海道半導体・AI戦略産業クラスター」の全体像について、半導体を取り巻く経済安全保障や地政学的な動向などの概況を含めてご説明がありました。また、人材不足やサプライチェーン強化といった課題への対応として、北海道半導体人材育成推進協議会をはじめとした人材育成施策、サプライチェーンの強化やエコシステム形成といった産業集積に関する取り組みが紹介されました。 

「つくる」、「つかう」、「つなぐ」―北海道大学の半導体戦略

登壇者:IFERS 石森 浩一郎 機構長

石森機構長からは、6月に公表した「北大半導体ビジョン」と「IFERSミッション」を中心に、半導体戦略が示されました。IFERSは北海道大学における半導体分野のヘッドクォーターとして、「つくる」「つかう」「つなぐ」をキーワードに、Well-being社会の実現にむけて教育・研究・社会連携を進めていきます。さらに、新たに整備された半導体プロトタイピングラボや、産学官連携を通じた人材育成の取り組みなど、現在進行中の活動が紹介されました。 

最先端ロジック半導体の構造変化と新たな挑戦

登壇者:Rapidus株式会社 シリコンテクノロジー本部 副本部長 岩﨑 晃久氏 

岩﨑氏からは、同社が目指す最先端半導体開発の戦略について講演が行われました。今後の半導体競争においてはトランジスタの微細化だけでなく、パッケージング技術を含めた全体最適化が重要になると説明しました。

また、Rapidusが競争力の源泉として「スピード」を掲げており、学習と改善のサイクルを高速に回すことが競争力の源泉になると説明し、「Fastest Learner」がこれからの半導体業界を制すると語りました。この過程においては、未解決課題も多く、産学連携の余地は極めて大きいと、応用物理学会関係者への期待を語りました。 

EUVリソグラフィの進化:Low-NA量産技術からHigh-NAイノベーション、そしてその先へ

登壇者:ASMLジャパン株式会社 ジャパンCTテクノロジー テクニカルマーケティング ディレクター 永原 誠司 氏

永原氏からは、最先端半導体製造を支えるEUV露光技術の歴史と将来展望が紹介されました。EUV露光は、日本の研究者である木下博雄氏(当時・NTT厚木電気通信研究所、現・兵庫県立大学名誉教授)が世界で初めて提案・実証した技術であり、講演では40年前の応用物理学会で日本からその基礎研究が発表されて以来、現在の最先端技術へと発展してきた歩みが振り返られました。

技術革新の実現には産官学連携や学会を通じた横のつながりが重要であるとともに、「革新的な技術は発表当初こそ注目されないこともあるが、発想の限界を設けず挑戦し続けることが大事」とのメッセージが示されました。

半導体ユースケース開拓 〜 農業AIロボット

登壇者:北海道大学 野口 伸 理事・副学長

野口理事からは、農業分野における先端半導体の活用事例が紹介されました。労働力不足が深刻化する中、フィジカル空間とサイバー空間を融合したスマート農業の実現に大きな期待が寄せられています。リアルタイム遠隔監視や自動化技術によって農業経営そのものが変革しつつあり、人と機械が協調する新たな生産モデルの必要性と、そのための技術として、非接触センシングによる糖度測定や収穫作業の自動化などが紹介されました。 

半導体の地政学

登壇者:北海道大学 大学院工学研究院 太田 泰彦 教授 

太田教授からは、地政学という観点を踏まえて半導体を取り巻く現状について語られました。また、北海道における半導体産業の発展を「Rapidusの2nm工場」という単一の出来事として捉えるのではなく、世界の地政学やサプライチェーン再編という大きな流れの中で理解することの重要性を指摘しました。そして、「世界の変化の中で、自らの技術がどのような価値や意味を持つのかを考えられる人材が必要である」と語り、これからの半導体人材に求められる視野の広さについて参加者に問いかけました。 

おわりに

本シンポジウムでは、政策、人材育成、研究、製造技術、産業応用、地政学といった多様な視点から、北海道における半導体産業の現在地と未来像が語られました。 

「北大半導体ビジョン」のキーワードの一つである「つなぐ」。本シンポジウムは、まさにその理念を体現する場となりました。産官学それぞれの立場から取り組みや課題、将来像が共有されるとともに、質疑応答では立場を超えた活発な議論も行われました。 

IFERSでは今後も、多様な主体が連携し、新たな価値創出につながる場づくりを進めてまいります。