イベントレポート「北大半導体Week2026」―葛西教授に聞く、半導体人材育成への想い
2026年8月2日から6日にかけて、「北大半導体Week2026」が開催されました。本イベントは、北海道で高まる半導体への関心を背景に、子どもから大人まで幅広い世代に半導体を身近に感じてもらうことを目的とした取り組みです。
2回目となる今年は、北海道庁主催の科学体験イベント「サイエンスパーク」や北大オープンキャンパスと連携し、見学会や体験プログラムなど多彩な企画を実施しました。
本レポートでは、その中から8月4日に開催した中学生向けプログラムの様子と、本イベントを企画した半導体フロンティア教育研究機構(IFERS/アイファース)副機構長を務める量子集積エレクトロニクス研究センター 葛西教授へのインタビューをお届けします。
北大半導体Week2026の詳細はこちらのイベントサイトをご覧ください。
イベントレポート:中学生向けプログラム「北大の半導体研究を見てみよう!」
参加した中学生たちは、半導体に関する基本的な説明を受けた後、実際に研究が行われているクリーンルームを見学。普段は見ることのできない厳重な研究環境を前に、興味深そうに見学をしていました。

また、大学院生による研究紹介や座談会も実施されました。座談会では、参加者と大学院生が「半導体に興味をもったきっかけ」をはじめ、私たちの生活を支える「半導体研究の重要性や難しさ」、さらには「研究を進める上で必要となる素養」まで、幅広く意見交換を行いました。


参加した中学生からは「日常的に使っているパソコンやゲーム機などを通して半導体に興味を持ち参加した」という声が複数聞かれました。イベントでの体験や先輩学生との交流を通して、半導体への理解と関心を深めている姿が印象的でした。中には、プログラム終了後も自主的に先生や学生へインタビューを行う参加者もおり、子どもたちの半導体に対する関心の高さがうかがえました。

インタビュー:半導体人材育成にかける葛西先生の想い
北海道の未来を支える半導体人材育成について、イベントを企画した葛西先生にお話を伺いました。
北海道の未来を支える半導体人材育成
── 先生は人材育成に関して非常に熱量をもって取り組まれていますが、その背景にはどのような思いがあるのでしょうか?
意図としては2つあります。
1つは、北海道で新しく半導体産業が立ち上がる中で、持続的に発展させるためには、やはり若い人たちの力がどうしても必要だからです。小学生、中学生、高校生にも半導体に関心を持ってもらって、「ぜひ自分でやりたい」と思ってもらい、将来の地域産業を支える人材になってほしいという思いがあります。
もう1つは、直接半導体に関わらない方にも、「半導体産業を応援してほしい」からです。例えばRapidus社が取り組む半導体は、世界最先端の挑戦で、非常に大変な作業です。例えるなら、スポーツで世界新記録に挑戦するようなものです。そういう時は、やはり周りの観客の応援が大きな力になりますよね。彼らが最先端のものづくりを成功させるためにも、道民の皆様に応援してほしいと思っています。
── イベントの手応えはいかがでしたか?
クリーンルームや研究内容を実際に見てもらったことで、新しい世界に触れて興味を持ってもらえたと感じています。ぜひ何か記憶に残って、「そういえば昔そんなことしたな」と思い出し、できれば将来自分で半導体をやりたいという動機づけになればと思います。
── 今回、実際に研究している先輩学生との触れ合いの場があったのも印象的でした。
年代や歳が近い方がコミュニケーションしやすいですよね。大学の先生だとどうしても距離感があって話しにくいと思うので、年の近い学生に直接話をしてもらう形をとりました。今日のいろんな体験を通して、まずは半導体というものを知ってもらうことが一番です。その上で先輩たちの研究を見てもらい、「ものづくり」そのものへの関心を広げてもらえたらと思っています。
「理系」だけに留まらない、半導体の多様性と魅力
── 半導体の産業と言っても、研究されている分野やジャンルが非常に広いですよね。
その通りです。今、半導体分野において「人が足りない」と言われ、人材育成の重要性が叫ばれていますが、それは世の中のイメージにある「電気電子」だけに限定された話ではありません。化学や物理、それ以外にも実に多様な分野が関わっています。
それから昨今ですと「作った半導体をどう使うか」という利活用も大きな課題です。北海道には過疎化などの地域課題がありますが、「半導体を使って地域の課題をどう解決するか」というストーリーを描くのは、まさに社会問題を知っている社会科学系など、文系の人たちなんですね。本学には12学部あって様々な分野がありますが、それらを結びつけて半導体と繋げ、地域課題を解決できるようにしたいと考えています。例えば昨年から新たに開講した「半導体の地政学」のように、国際情勢や産業構造の問題を扱うのはまさに文系の領域ですし、北大では文理それぞれの視点から半導体を学んでもらえる講義を今準備しています。
──半導体は理系だけでなく、地域社会や私たちの暮らしにも深く関わるテーマなのですね。
例えば熊本もそうですけど、巨大な半導体工場が突然できると、街の様子や産業構造、人々の暮らしが変わるわけです。そうした「街づくり」といった領域にも半導体は影響を与えるわけです。だからこそ文理問わず、1人でも多くの方に半導体に関心を持っていただき、「自分がやるんだ」という気持ちになってもらえればありがたいですね。
おわりに
葛西先生、ご協力いただいた学生の皆さん、ありがとうございました。北大半導体Week2026は、参加者が研究の最前線や半導体産業の広がりに触れる貴重な機会となりました。来年の開催も楽しみです。
